たった一人の友達

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「行ってらっしゃい」  毎朝、彼女はそう言いながら出かけて行く私を玄関で見送ってくれる。一方、彼女は日中は家でお留守番。その間に何をしているのかは、秘密だそうだ。  そして帰りは玄関で迎えてくれることが多いが、たまに駅で待ち伏せという名のお迎えに来ている日もある。彼女の気まぐれだ。  そういう日は、私は彼女と一緒に買い物をして帰る。  食料品を買うのは一人の日でもいいので、こういう日は一緒にショッピングモールに入って洋服を見たり、CDショップで最近の売れ筋を見たり。買い物とは言っても、だいたいは何も買わずにウィンドウショッピングだけして帰る。外食はしない。彼女は私だけにしか見えないんだから。  彼女とお話しながらいろいろなものを見ているだけで、私にとってはとても楽しい時間である。
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