たった一人の友達

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 私の趣味は、旅行である。休みのたびにどこかへ出かける。もちろん、彼女も一緒に。  空の便ではなく、電車で行けるところ。何て言ったって、車窓からの眺めを楽しむのも旅行の醍醐味だから。  私は二人分の切符を買って、彼女を隣に座らせる。道中は、各地の駅弁のクオリティについて談義したり、景色を見て感想を言い合ったりする。  旅行先では、写真を撮るのと、詩や小説を書くのが私の習慣。父の残した一眼レフは、いまや旅のお供だ。彼女は、私の撮ったひとや建物や、自然の写真を見て、感想を言ってくれる。もちろん、いつも褒めてくれるわけじゃない。これはピントがずれているとか、バランスが悪いとか、ダメ出しをもらうこともある。  詩や小説は、一度の旅行で書ききれるような短いものだ。街のひとびとや、風や匂いや、景色を見て感じたことを言葉にする。それから膨らんだストーリーを物語にする。書きかけの状態で彼女に見せて、続きを一緒に考えたり、構成を練ったりすることもある。そうやってああだこうだ話すのが、また楽しいのだ。
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