第03説 夕暮れの神社参り

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第03説 夕暮れの神社参り

 引越しが無事に終わった頃には夕方になっていた。両親が近所の挨拶(あいさつ)回りをしている間、自分は“ある場所”へ向かった。我が家のある此所(ココ)(くず)()(ちょう)には、"ある伝説"が存在する。そう、葛の葉伝説である。葛の葉伝説は大阪で言わずと知れた(オン)(ミョウ)(ジ)*安倍(あべの)晴明(せいめい)出生(シュッショウ)の秘密に関わる伝説である。  その内容は、安倍晴明の父親とされる安倍(あべの)(やす)()という侍が信太森(しのだのもり)狩人(かりうど)(おそ)われていた白狐(シロギツネ)を助けるが、保名(やすな)自身は怪我(けが)をしてしまう。すると、通りかかった(くず)()と名乗る娘が怪我をした保名を介抱し家へ見舞いに来るようになった。いつしか、恋仲になり結婚して子供を授かる(童心丸(どうしんまる)と名づけられた子供は、(のち)(オン)(ミョウ)(ジ)*安倍晴明として世に知れ渡る事となる)。しかし、童心丸が五歳の時に葛の葉の正体が保名に助けられた白狐であるという事が発覚してしまう。気づかれた葛の葉は、ある一句を残し、(しの)(だの)(もり)へと帰ってしまった。「恋しくば 尋ね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」
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