第03説 夕暮れの神社参り

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 信太森(しのだのもり)葛葉(くずのは)稲荷(いなり)神社の鳥居の前で一礼する。病気で亡くなったお爺ちゃんの影響で神社参りだけは欠かさなかった。そして病気が治ると信じて来る日も来る日も通った。でも、お爺ちゃんは…。大阪を出る時に書いた六年前の絵馬(えま)には、“もう一度、我が家へ帰って()れますように”と(ねが)奉納(ほうのう)した。(つら)なる朱色(しゅいろ)の鳥居を通り抜け(やしろ)に参拝する。 "これから"を()(がん)した。(ゆう)()が沈みかけて、空には夕焼けが現れている。無事に参拝を()え、連なる朱色の鳥居を(くぐ)り戻っていると白い着物を着た白髪(はくはつ)の若い女性と、すれ違った。自分が見ても、()しくは誰が見ても綺麗(きれい)と言い張るであろう美人(べっぴん)な女の(かた)だった。振り返ると、そ の女性に()られるかの様にして朱色の鳥居にぶら下げられていた(クレナイ)提灯(ちょうちん)が、女の人が歩くに連れて自然と()いていった。その()、家に着くと疲れたせいか自分の部屋にある小さなコタツで、ぐっすりと寝込んでしまった。
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