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山の秋は足早にやって来る。
軽やかな音色を響かせ、秋の虫たちが夜毎賑やかに開く音楽会に耳を澄ませていたら。
それも束の間、虫の音が止む頃には 木々が色づき始め、いよいよ紅葉が始まる。
紅、黄、橙、それに名残の緑が混じって、見事な色彩が山々を包む。
静かな風に乗って緩やかに木の葉が舞い、その中をそぞろ歩く。
身体に纏う空気は湿度を感じず、落ち葉を踏みしめる肉球も心地良くて…
冬毛も準備万端、ますます季節に溶け込み絵になるこの姿。
「三郎!何処にいる?」
ーーせっかく詩人になった気分でいたのに。
すっごく絞り出した渾身の言葉の数々だったのに。
僕が人間だったら、ボイス機能で録音しとけたのに。
何かに投稿すれば、僕の才能が認められ…
「おーい、三郎!」
おっと、横山が僕を呼んでいたんだ。
さっき軽トラで戻って来たからな。
さて、僕の出番だーー
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