鈴の音

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まるで危険物を扱うように、大きな箱がゆっくりと開けられる。 「着いたぞ。すぐ診てもらえるからな」 横山が優しく声を掛けた。 『殺せよ』 箱から出された声の主は、そう呟いた。 なんと物騒なことを。 箱の中身は犬用ゲージで、その隅っこで 痩せ細り全身泥だらけの雑種の中型犬が低く唸っている。 泥塗れの後足の隙間から、はっきりと出血しているのが見えた。 「倒れた木と木の間に足が挟まって動けなくなっていたんだ。山菜採りに来ていた人から連絡があって」 横山が犬の隣にしゃがんだ。 『殺せって』 人間には唸り声にしか聞こえない言葉は…哀しい現実。 『新しくてちっこい犬の方が可愛いってよ。俺はもう必要ないって!クソッ、足が痛ぇよ!殺してくれよ!』 「ほら、あんまり吠えると体力使うぞ」 横山、東さん。 こいつは首輪をしている。 …きっと、人間に捨てらたんだな。
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