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『ちょっと お兄さん、落ち着きーな』
痛い、殺せ、と喚く犬に声を掛けた。
興奮して僕の声なんか聞こえていないようだったが、僕がゲージの前に歩いていくと驚いた顔で鳴くのを止めた。
『お兄さん、足、痛いんやろ?そないにワンワンゆーてたら 痛みも増すで』
『…何だ?お前』
『猫』
『そんなのは見たらわかる!俺をバカにしてんのか?!』
『ちゃうって。とにかく落ち着いて、ここの人間は大丈夫やから』
『ふん、お前は人間に媚を売ったクズペットか。上手いことやって生き永らえてんだ。胸くそ悪い!』
『…早よ治療してもらい。命は大切にせな』
『うるさい!甘ちゃんペットに説教される筋合いはねーよ!』
ーーいつものことだ。
ここにやって来る大半の犬猫は、愛して止まなかった人間に裏切られたか、はなから人間を信じることもさえも出来ない奴らだから。
僕の存在が気に触るのは、よくわかる。
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