鈴の音

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僕の仕事は ここに来た仲間に、ここが安全で安心な場所であること、ここで働く人間たちが それまで彼らが出会ってきた人間とは違う種類であることを伝えることだ。 人間の所為で心が病んだり荒んだりした彼らを信用させるのは簡単なことではないし、仲間から罵声を浴びせられたり 酷く軽蔑されることは日常茶飯事。 でも全然苦にはならない。 だってここに来る仲間の方が、はるかに辛くて苦しくて、死にたくなる様な経験をしてきたんだから。 それに横山はもちろん、東さんだって他のスタッフさんだって、僕のある意味〝特別な〟能力を知っている。 残念ながら横山とは、志織やお兄ちゃんみたいに会話は出来ないけれど…波長が合うから不思議だ。 僕が、連れて来られた仲間と ここの人間との橋渡し役になって、双方の理解と信頼が構築出来た時は 涙が出るほど嬉しい。 そう、この役目にある種の生き甲斐さえ感じている。
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