第1章

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横断歩道の青が点滅している。 思いっきり走る。 クソッ!間に合わなかった。 コンビニのでぶの男がモタモタしてるからだよ。 アイツ、わざと俺の時だけゆっくり入れてんじゃねーの?って位遅い。 コンビニでおでんとタコの和え物と串焼きを買った。 夕飯はいつも飯は食わない。 ビールにつまみで終わりだ。 信号待ちの間、横のアパートから 子供と父親が風呂に入ってる声が聞こえる。 今日は土曜日だからな。 どこの家も休みの1日目で、ゆっくり家族団欒だろうよ。 俺はこの所、土曜に休んだ事がない。 会社は基本的に土日週休2日だ。 でも、休める雰囲気ではない。 俺は今、地域情報誌の営業をやっている。 10年前、二流大学を卒業して、大手製薬会社に就職した。 配属は営業。 毎晩のように 大学病院の医者らの接待で、身体を壊し、3年で休職を余儀なくされた。 そもそも薬科大を出てる訳じゃない俺が、大手製薬会社に就職出来た事が、ラッキーだっただけで 製薬会社の営業になりたい奴は、掃いて捨てる程いる。 身体を壊した俺には、復職後の仕事などない。 表向きは総務部で人事担当に回されたが、そこには既に古株が腰を据えている。 毎日、針の筵の上でジッと耐える日々。 田舎の親は、辞めずにそこで耐えろと言ったが、俺には無理だった。 退職届はあっさり受理され 俺は26歳と半年で失業保険をもらう事になる。 それを機に安いアパートに引っ越した。
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