第1章

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安いだけの事はある。 アパートまで駅から7、8分歩かなければならないし、軽量鉄骨ではあるが築年数は20年を超えている。 このアパートに住むようになって3年。 今の地方紙の営業をやっている以上、これより家賃の高い所には住めない。 やっと横断歩道の信号が青になり おでんを抱え、サブッと身ぶるいしながら足早に渡る。 少し歩くと左側に月極め駐車場があり、その先を曲がるとアパートだ。 この日は何気なく、駐車場に目をやった。 暗闇で光る物がある。 うっすら街灯で黒猫である事が確認出来た。 黒猫は真っ直ぐこちらを見てジッと動かない。 俺は特別猫好きな訳でもないし そのまま、視線を足元に戻し、駐車場の先を左折した。
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