第1章

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朝はほとんど寝坊だ。 急いで身支度し、何も食べずに会社に行く。 営業と言っても俺のエリアは半径3~4kmの狭い、小さな繁華街とシャッター通り商店街があるような地域だ。 毎度訪問する先も自然と決まって来る。 テレアポで求人の情報が取れた時はラッキーな位で ネット社会で紙媒体の地域情報誌なんて、高齢者しか読まない。 俺はこの会社に入って3年目だが、営業成績は毎回下位。 上司からは「柴田君さぁ~、今時訪問するだけじゃ、な~~んにもなんないんだよ?君さ、そもそも覇気が無いもん、なんかスポーツの話題とかさあ、店主との共通点探して話すとかさぁ~、ここ使ってさあ」と自分の頭の横を指差して説教される。 そんな時も俺は、この上司の 鼻の脇にある大きなイボのようなホクロをジッと見てしまう。 この日も何軒かあたったが 一軒も広告は取れず、それでも なんだかんだ雑用を言いつけられ 帰りは定時を2時間超えた8時。 これもサービス残業で残業代など付いた事がない。 毎日同じコンビニで同じ時間に 同じような物を買い、ほぼ同じ時刻に、駐車場の脇を通る。 何気なく、昨夜猫のいた場所に目をやる。 黒猫は同じ場所で、ジッと動かず こっちを見ていた。
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