第1章

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俺は、仕事の帰り道、黒猫を確認する事が日課になっていた。 そう言えば、アイツは誰かに飼われているのか? 激しく痩せている訳でもなく 太っている訳でもない。 恐らく誰かが食事は与えているんだろう。 そうか、だとすると 俺が帰って来る時間の後に エサをやりに来る人がいるんだ アイツは、きっとその人を待ってるんだ。 一度、家に帰ってから 30分位して、駐車場まで見に行ってみた。 いない。その後数日、同じように 20分後、15分後、10分後と 見に行って見たが、いつもいない。 やはり、アイツは俺がアパートに帰るとどこかに消えるんだ。 それが分かり、この日は 黒猫と目があってからアパートに向かう途中、何度も振り返った。 すると彼は駐車場の金網を潜り、 隣の民家に入り、民家の裏から出て来た。 そうか、あの日もそうだったんだ。 俺がアイツに近づいた日、コンビニの袋を落として、驚いて逃げたと思ったのは、違ったんだ。 俺を誘導していたのか。 民家の裏口には、私道?と思える狭い道があり、そこを入ると右側にどこかの工務店の資材置き場のような古いガレージがあった。 俺は民家の前を真っ直ぐアパートに帰っていたから、こんなガレージがあるのを知らなかった。 猫は何度か俺を振り返りガレージの中に入った。 シャッターは一応あるが、途中で閉まらないのか、半分だけ降りている。 アイツここに住んでるのか。 ガレージに住んでるからガレ。 俺は勝手に黒猫をガレと呼ぶ事にした。 中は雑然として真っ暗だが、スマホの灯りで照らして見ても一目で 盗まれそうな物は無かった。 そこの棚のような所に 青いビニールシートが畳まれていて、その上にバスタオルが置かれている。 その横に、タッパーのような容れ物に水とエサ入れがあった。 どうやら、ここは夜は誰もいなくなるが、昼間誰かが来て作業をしているようだ。 ガレは、バスタオルの上に乗ると俺に見せつけるように、右手で顔を洗うような仕草をした。
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