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「それともう一個。聞きたいんやけど」
晴れて自分の仕事仲間となる大に対し、深津は書類の備考欄を指でつついた。
「これ、治らへんの?」
その内容は、大の特殊事項である。特殊というよりは、大の、人外と戦う際の能力についてだった。
「いや、俺らは別に何も思わへんねんけど、自分の力、あんま好きちゃうんやろ? ほんまはなぁ、魔除け出来る子って珍しいし頼りにもなるから使ってほしいねんけど、無理強いしても失敗のもとやしな」
「すみません……。一応、日吉大社と延暦寺にも相談させて頂いたんですが、駄目でした。これで封じておく以外、どうにもならないんだそうです」
と、大は首を振って、頭の簪に触れた。細かな彫刻が施された、綺麗な木製品である。
「まぁでも、試験はそれしたまま受かったって聞いてっし、大丈夫かな。何かあったら、すぐ言いや」
「ありがとうございます」
ようやく大は、ほっとしたように笑みを浮かべた。
坂本塔太郎たちが平安神宮の前で戦っていた頃、古賀大は御池通にある喫茶店「ちとせ」に書類を持ってやってきて、京都府警地域部人外課の警部補であるベテラン人外家、深津勲義と簡単な面談を受けていた。
書類の中身は八坂神社の署名による「人外家」としての合格ならびに所属証明書がまず一枚。
そして、京都府警から出された「京都府警察委託人外家」という身分証明書が一枚。
そして八坂神社と京都府警本部長双方の合意による喫茶店ちとせ、正式名称「京都府警人外特別警戒隊、八坂神社氏子区域事務所」への合同勤務依頼書。
以上、この三通であった。
面談を終えて深津が立ち上がろうとすると、大はそれを呼び止めた。
「ここは、何人でお仕事されてるんですか」
「京都府警からは俺と玉木の二人。で、八坂神社の人外家が三人おるわ。自分入れたら、四人やな」
まぁ、普段は喫茶店の店員やけど、と付け足した。
「その方々は……」
「出かけてるよ。人外の対応でな。ーーおっ、ちょうど帰ってきたわ」
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