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「おばあさん、見えてるんですか」
「ちょっとだけな」
琴子が訊くと、お婆さんは笑って頷いた。自分達だけでなく、気絶している化け物さえ、普通の人には見えなくなっているはずである。だからみんな憂いも災いもなく暮らしていけるのだが、たまに、こういう人がいるのであった。
「お嬢さん、かっこええなぁ。薙刀やったはんの」
「いえ、私は自分勝手に振り回してるだけで……」
「私らの若い時は、女のお巡りさんなんていいひんかったさけな。きりっとしてて、素敵やったで」
「ありがとうございます」
琴子は言葉にこそ出さなかったが、明らかに「お嬢さん」呼びを喜んでいた。残りの男三人は彼女が独身子持ちである事をふっと頭によぎらせていたが、後が怖い為に、黙っていた。
「せやけど、お巡りさんも大変やなァ。昔も今も、お化けと斬り合いせんならんし」
お婆さんの勘違いに、竹男はすかさず訂正した。
「お母さん、僕ら、警察じゃないんですよ。警察と一緒に仕事してる一般市民です。警察官は、このスーツ着た奴だけですわ」
「ああ、そうなん? 私てっきり、こういうんは全部警察がやってんのやばっかり思ってたけど」
「ほんまはその方がいいんですけどね。神様仏様の世界は、ややこしいんですわ」
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