序章「京都府警の、雷のエースと魔除けの子」

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京都府警には、「人外特別警戒隊」という、本部直属の部署がある。 その名の通り、人でないもの、すなわち「人外」が起こす事件を担当する部署である。 いつの世も、人の悪事、すなわち犯罪については人間の警護組織が対応している。昔でいう検非違使、今でいう警察がそれである。 そして普通の人には見えない、けれど昔から実は存在している「人外」に関しても、かつては朝廷や幕府が作る人外専門の組織が、それらの起こす悪事に対応していた。 陰陽師、検非違使、六波羅探題、変わったところでは新撰組、などなど、一般の警護組織にそういう化け物退治屋が附随する形で、京都の治安は、人外からも守られてきた。 が、明治に入ったあたりから国際化、交通手段の発達によって案件の増加と多様化が進んだ。 しかし警察本体は人間の事で手いっぱい。何より、「それらが見える、話せる、触れられる、戦える」という適性はすべての人間にあるわけではなく、募集するにしても養成するにしても、膨大な時間や経費がかかってしまうのだった。 という事で、人材の確保も組織構成も、時代が進むにつれて難しくなり、改革の必要を迫られていた。  やがて京都府警は、力を持っている寺社仏閣や、京都府知事に人員を要請した。 その結果、府警が擁する正規の隊員の他に、法力のある寺の僧侶や神社の巫女など、あるいは適性を持った一般人や善良な人外といった者も人員に加え、合同で、人外の対応してもらうという新たな形を誕生させた。  それが今の京都府警「人外特別警戒隊」、通称「人外課」である。 人外の交番とも言える「事務所」を密かに持って、火急の際には駆けつける。 そういう警察官を含む人外の専門家の事は、字面だけ変えて「人外家」といった。
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