第三話:先斗町・命盛寺の伝説2

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すっくと立ち上がって歩み寄って来たのは、今まで桟敷の端で板の修理をしていた大柄の僧侶だった。 「そうだ。坂本塔太郎、お前の事だ!」 床板を踏み抜かんばかりに歩いてくる様子は一体何事、と大が思った時にはもう塔太郎の胸倉を掴んでいて、その突然の狼藉に全員が仰天した。 その気になればすぐに振り払えたはずであろうが、何故か塔太郎は、抵抗しない。 「なぜここにいる。お前のような奴が来てよい場所ではない!」 「や、やめて下さいっ」 すぐに大や玉木、栗山が僧侶の手を剥がそうとしたが、それを制したのは他でもない塔太郎だった。 他の僧侶たちも準備を放り出してこちらへと駆けつけ、なだめにかかった。 「俊光さん、おやめ下さい! 俊光さんはご存じないのかもしれませんが、坂本さんは八坂神社の人外家なんです。昨年も今年も、住職がちゃんと案内状を出したはります」 小柄で太った僧侶が間に入って塔太郎を助けようとする。彼の言葉を聞いた僧侶は、打たれたように驚いた。 「八坂神社だと? この男が?」 「そうです」 次に、剃った頭も青光りする年少者が答えた。 「坂本さんは、ちゃんと八坂神社がお認めになった人外家なんです。八坂神社の氏子も私らも、みんな頼りにしています」 俊光は信じられないというふうに目を光らせ、塔太郎を睨んで握る手をいっそう強めた。 どうしたらよいか分からず、大は右往左往するだけである。 「よく八坂神社が、お前みたいな者を許したな? 一体何の手を使った? 実力行使か? お前が魔を退治する人外家なぞ笑止千万。本来ならば、お前なぞ神仏の怒りに触れて死んでもおかしくないのだ!」
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