218人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーーーー薄灯りの中で浮かび上がる影が、一定のリズムで揺れていた。
今、一瞬だけ私・・・どこかに行っていた気がする・・・。
黒髪が乱れて、少し伸びた前髪の隙間からこちらを見下ろす晴馬の顔が、いつもとは違ってすごく真剣で綺麗だった。
「夏鈴・・・なに考えてる?
・・・今はもうなにも考えるなよ・・・俺のことだけを見て・・・」
気を付けていないと、見えない力に引き上げられるように意識がもっていかれそうになる。
身近で起き始めた事件によって、私の感覚が日々追うごとに研ぎ澄まされていくようだった。
そうなってくると、ありふれた日常の中にいる自分を見失いそうになる。
当たり前な平和が歪んで、人の心の奥に眠る狂気の色だけが視界を覆い始める・・・。
そんな世界しか見えない目なら、もう要らない。
愛する人が不安な目を私に向けてくるのを見ているだけで、心臓が押しつぶされそうなほど苦しい。
「はるまぁぁああ・・・・んん・・・・はぁ、あ・・・・あ・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・」
最初のコメントを投稿しよう!