第1章 無限回廊1周目

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起きていながら見る夢を白昼夢という。 でも、今はまだ夜中だった。 突き動かされて車のキーを握りしめると、私はパジャマのまま靴をひっかけて外に飛びだした。 お母さんが攫われた! 殺人者がやってきて、私じゃなくお母さんを攫って行った! 吐き気がこみ上げてくる。 アクセルを踏みながらハンドルを切る。 暗い漁村の街道を突き抜け、町営病院の前を通過してそのままアイツの脚跡を追いかけた。 起きているのか夢の中にいるのか、よくわからない状態だ。 今、感じるのはお母さんを一秒でも早く取り戻すことだけ・・・。 死なせない! 助けたい!! 異常なほどに勘が働いて、犯人の行先を辿ることができた。 夜の河原にひっそりと建つプレハブ小屋に近付くと、あの男がお母さんを襲おうとしているところだった。
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