ぶつかる水商売

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 衛星都市のどこかにある住宅街。オフィス街で働く市民の住居がたくさんある。《戦国時代》において民衆は1個の都市に生まれて一生その都市で暮らすのが大半である。都市間を行き来するのは行商人か職安寺の僧侶くらいである。  クナイは職安寺のお坊さんから焼いていない食パンを手渡された。そしてヴァジュラタブレットを確認するように指示される。ヴァジュラタブレットとは情報通信端末型携帯電話機である。職安寺からこの国の民に提供されたものだ。  電文アプリを起動し、受信した職安寺からの電文を確認する。 「昼間だが、遅刻してくる男子中学生がいる。その子を探して偶然を装おって正面衝突しろ? 成功すれば報酬6万電射賃でござんすか? どこが水商売というんでござんすか?」  クナイは理解できない。思春期の少年に対して淫行を働けという指示ではない。未成年の自分にそんなんさせたら職安寺の労基に反するからだ。  とにかくクナイは生状態の食パンの端っこをくわえながら走り出す。職安寺から届いた電文にはそう記載してあったからだ。真昼間だぞ。こんな時間帯に遅刻なので大急ぎで走ってくる中学なんているはずがない。むしろ無断欠席ではないか。     
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