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「そっか、そうなんだ。じゃあ、俺急ぐから」
乱れた息が整っていたのにまた駆け出す凪兄ちゃん。
その背中は小さくなって、やがて消えた。
凪兄ちゃん、待って、と引き留めたくなったけれど。
もうあたしにそれは出来ない。
ふと、そういえば教室にいるときに携帯が何度か鳴っていたことを思い出し、携帯をガサゴソと取り出し、電源ボタンを押すと―――三件の不在着信。
それはすべて、凪兄ちゃんからのものだった。
なぜ、と疑問が頭をよぎる。凪兄ちゃんは、滅多にあたしに電話しない。用件は大概メール。それさえ、最近はめっきり減った。―――それなのに、なぜ。
それから、あたしを見かけたときの息の切れ具合が尋常じゃなかったこと、彼氏が出来たことを嬉しがってくれなかったこと。
全てを重ねると――どうしようもなく自惚れた答が導き出される。
……でもそれは、所詮自惚れ。
そんなわけないとかぶりをふって、再び歩き出した。
―――――――――――――――
あたしたちは、いつまでも平行線のまま。
*Fin*
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