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すれ違った時に腕を掴まれた。僕を掴む人が大学にいることに驚いた。ちゃんとした人だ。僕をしっかり見ている。なんで怒った顔してるんだろう。名前を聞かれた。
『カイだな?』
そう言ったのが分かった。
『カイだな?』
心臓が飛び出すかと思った。その後の彼の怒ってるみたいなのがよく分からなかった。
『カイだな?』
僕は嬉しくて嬉しくて、その人の前にいられないほどだった。早く弓道場に教えたかった。
歩き出して来た僕に飛びかかってくる気配を感じた。僕は思わずその腕を掴んで投げてしまった。そこに倒れてる人が、さっき僕の名前を呼んでくれた人だと分かって慌てた。
大事な言葉をくれたその人を、僕はそっと担いで贅沢だけどタクシーを使って自分の家に連れて行った。
大事な人になった。
――と も だ ち――
弓道場と、同じ。一射絶命。
風みたいな人。太陽みたいな人。僕を救ってくれる人。この人がいなくなっても、きっと僕は終わるんだ。
でも、きっとそれは悲しいことじゃない。
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