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また、はっ と目が覚める。汗で体が気持ち悪い。布団の横を見ると、新しいタオルと水の入ったボ―ルが置いてあった。
――ありがとう――
頭を下げて、タオルを絞った。冷たいけど体を拭っていくととても気持ちいい。同じようにボールの隣に置いてあった着替えを身に付けた。
時計を見ると、5時。まだ早い。水なんか流したらきっと朝ごはんがもらえなくなる。もう一度横になった。汗を拭いて着替えたからさっぱりとした。
走って来てもいいんだけど…でもそれじゃまた汗をかくから ステラ に悪い。ドアを開けて無事で済むかどうかも分からない。確かステラの口は『やめなさい』と言っていた。
目を閉じた。少しして僕はまた、夢の中に引きずられて行った。
不思議なことに夢の中では音があった。聞こえてくる ぷすぷす という音と、ゴムの焼けたような臭い。
閉じた目の中で、もっと目を閉じる。もう見たくないものが目の前にある。
大きな黒い目。僕をじっと見ていた。目が生きていた時の最後の言葉が残っている。
「カイ………ごめんね……カイ…」
とっても優しい声なのに、怖い 怖い 怖い………。
最後に聞こえたのはその声だけ。後はとっても静かで、あんまり静かだったから僕はまた怖くなった。 足が動かせなかった、その人が乗っていたから。
ぎゅっと目を閉じる。それでも僕を見てる黒い目。だんだんどんよりしていくのに僕の顔をじっと見てる。
体が冷たくなっていって固くなっていった。痛い足。ひどい臭い。怖い目。怖い目。怖い目。
でも、もう声も音も聞こえない。
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