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 辺りは暗かった。  急に足が軽くなって、そのせいですごく足が痛かった。外は眩しくって、眼の前に知らない男の人たちがいて、僕は泣きだした。  変だ、泣いてる声が聞こえない、僕の声なのに、聞こえない。  男の人たちが僕を指差して何か喋っていた。口が動いてる。一人の人がそっと僕を持ち上げてくれた。何かに寝かせられて白い車の中に乗せられた。起き上がろうとするのを何度もあの優しい手が抑えてくれた。  怖かった、頭を撫でられて手を握ってくれたけど、車の動くせいで気持ちが悪くなった。起こされて何かが口の前に突きつけられて、僕は何度も吐いてしまった。  場所がぐるっと変わる。白い冷たいベッドがある。僕は部屋の隅っこで膝を抱えて眠ってる。抱き抱えられてベッドに乗せられるけど、誰もいなくなると部屋の隅に行った。壁が抱いてくれる。後ろから守られてる気がした。  あの人が来た。車に僕を抱いて乗せてくれた人。車の中で僕の手を握ってくれた人。頭を撫でて手を伸ばすから僕はその手にしがみついた。  ベッドに寝せられて、手を握ったまま僕は寝た。その手をいつまでも握っていたいのに…… 。  また景色が変わってしまう。  たくさんの子どもたち。優しい目をしたよその人。たくさんの中の独りの僕。  字を教わる。忘れてしまった声の出し方を教わる。出てるのかどうかも分からない。舌を掴まれてあちこち動かされる。痛い。怖い。  街に出る練習もする。街で先生に手を引かれながら自分が何か言った気がした。知らない子が指差して笑う。笑う。笑う。  口を開くのをやめた。   
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