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「カイ、あなた、財産があったのよ。あなたのお母さんの遺したもの。あなたが相続したの。こんな家に縛り付けられずに済むほどの財産だったの。この前名前書かされたでしょう? あれは……おじいさまを後見人に、財産を管理する人に指定する書類だったのよ。カイ…あなたには何もなくなってしまったの……」  良く分からなかった。そのおかげで大学に行けて、弓を続けられるようになった。それ以上の幸せがあるんだろうか。 ――ステラ 僕は それで 構わないよ お世話になってるし 弓が出来る―― ステラの涙が止まらなくて、僕は抱きしめられた。  大学は楽だった。友だちを作らずに済んだし、誰も話しかけてこない。けど。望んでいたのにどこか寂しかった。  弓道場は荒れてたけど、あった。顧問だったという先生はノートに書いてくれた。 『もう誰もしないし、取り壊しの話も出ている。君が3年生になる頃には無くなってしまうと思うよ。それでもいいかい?』 僕は頷いた。 『じゃ、好きなようにしていいよ。でも誰も掃除も何も手伝ってはくれない。全部一人でするしかない。いいね?』 道場を磨いていて思った。 (ここは、僕の場所なんだ! 僕の居場所なんだ!!!)  風が弓道場の中を通り過ぎていく。手を広げる。音が聞こえる、手に。 体に。 僕の全身に。 音が聞こえる。 <一射絶命> ここだ  ここが無くなったらもう終わり。 ここだったんだ      
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