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「え、何。梨沙ちゃんもチョコくれんの?」
くるりと此方に顔が向けられ、不意にその男子と目が合った。
改めてまじまじと顔を見詰めると、なかなか端正な顔立ちで、クラス一イケメンと言われている男子よりも何処か謙虚で真面目そうなところがあって、それが女子達の瞳を引くのかもしれない。
(え、何かコレ恋してるみたいじゃない―!?)
やだぁ、と言って頬に手をやると、そこはとても真っ赤で、
心なしか心臓の鼓動も速くなっている気がした。
「ちょ、ちょっとどうしたの梨沙。」
「ごめん、何でもない。次の授業でやるテストの事が気になって」
そう言って慌てて誤魔化したが、誤魔化し切れただろうか。
否、近くにいる友人にはこの動揺が伝わっているに違いない。
「ひょっとして梨沙ちゃんも・・・」
傍で読書をしていた女子が、椅子からスッと立ち上がり、私にそう話し掛けてきた。
「梨沙もって、朱音(あかね)アンタもなの?」
これには私も面喰ってしまった。どちらかというと朱音は地味で目立たない方で、
あまり自分から意見を言う方では無かった。
その朱音が椅子から立ち上がり、「貴女も彼の事が好きなのか。」と問うてみせたのである。
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