始まりの予感

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私はただ驚き、淡々と彼女の話を聞いていた。 「カッコ良いもんね、飛鳥君。梨沙が好きになるの分かる気がするよ」 顔をぽーっと赤くしてそう呟く朱音の、なんて可愛い事。 私の表情よりも数段顔が真っ赤だと思うのは気のせいであろうか。 「違う違う。アッコがあまりに言うモンだから、どんなに良いもんかと思ってみてただけ」 「でも、結構ガッツリ見詰めてたよ」 「え、え…そうかな…」 茜にそう言われ、思わずだじろく。 『私も、みんなと同じかな』と弱弱しい声で言っていたあの姿は、何処へ行ったのだろう。 少なくともこんな強気な彼女の姿を見たのは初めてだ。 「こりゃこりゃ、これはアンタ意外と苦戦するかもね」 傍で話を聞いていた別の女子(私の話を盗み聞きしてた人が、何人居たのやら・・・) がツカツカと私に歩み寄り、そう声を掛ける。 「結構可愛いわよ、朱音。ホラ地味なカッコしてるからあんま目立たないかもしれないけど― ああいうコは、化粧して着飾れば、見違えるように美人になるわヨ」 確かに、その通りかもしれない。バランスの整った顔立ちに、パッチリとした瞳。 肌は白く唇にも透明感がある。彼女は所謂『化ける』タイプの女子ではないだろうか。     
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