小説家を目指している女の子のはなし

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小説家を目指している女の子のはなし

午前2時、真っ暗な暗闇の時間。 私は、この時間帯が好きだ。 よく、『夜更かしは美容に悪い』などと言われているが、 夕食後から小説を書くのが楽しく、気付けばこんな時間になってしまっている。 「あ、もうこんな時間…そろそろ眠らなきゃ」 そう思い、ファーと欠伸をしてベッドの近くまで移動するのだが、そこから先がなかなか行けない。まだ、もうちょっと…あの新作の小説の続きを書いてから… そうこうして、パソコンの前とベッドの前を何度も通り過ぎるうち、気付けばこんな時間帯まで起きている、という風になるのである。 「あら梨沙子…まだ起きてたの。」 隣の部屋で寝ていた寝起きの顔で私にそう声を掛ける。 午前2時半。決まって母はこの時間に目が覚める。 「あ、うん。どうしてもさっき書いた小説の続きが書きたくてね… 1作で終わらせるつもりだったんだけど、書きだしたら止まらなくて… ゴメン、起こした?」 「別に起こしてはないけど・・・身体に悪いし、ほどほどにしときなさいよ」 母を気遣う私、大丈夫よ、でも健康に悪いから夜更かしはヤメなさいと注意する母。 この時間帯に、母と私が話す会話のパターンは決まっている。 (こうやって小説が書けるのも、父が一生懸命働いて、母が家事を全てやってくれるお陰なんだなぁ・・・) と思うと、じんわり胸が熱くなる。 誤解なきよう言っておくが、私はニートではない。 週に5日フルタイムで働いて家にお金も入れている。だが、こうやってのんびり小説を書けるのは、一家の大黒柱である父や、ひと通り家事を全てこなしている母のお陰に他ならない。
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