小説家を目指している女の子のはなし

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手元に温かいコーヒーを運びながらポツリそう呟いた。 思わず出た本音。父にも母にも漏らすことはないけれど。 (でもまぁ、本業あってこその小説よね) 今、小説を夢中で書けるのは、本業という大事なものがあるから。 『限られた時間』『限られた場所』でしか書けないからこそ、こんなに夢中になるのだ。 そう感じるのもまた事実だった。 「ま、無理せずボチボチ行くかな」 悩むのはこれくらいにして、と自分に言い聞かせ再度キーボードに手を伸ばす。 例え一冊も売れなくたって― 『感動した』『梨沙子ちゃんのお蔭で、人生が変わった』 そう言ってくれる人が一人でも居たのなら、それで充分ではないか。 優しく静かな声で、自分にそう言い聞かせながら。
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