噂の転校生編

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噂の転校生編

朝のホームルームの時間。花子がいる2年A組の教室はざわついていた。主に女子生徒が。 それも無理はない話で転校生が来たのだ。とびきりイケメンの。そう、今朝がた花子がお約束の出会いをした、あのイケメンである。 「初めまして、木村健(たける)といいます。趣味はひとりじゃん拳です。よろしくお願いします」 健の自己紹介にざわつきが、別の種類のざわつきに変化した。やだイケメン、のざわつきから、あいつヤバくない、のざわつきに。 しかしそれも一瞬のことで、まあイケメンだからいっか、と許された。むしろ逆にありきたりじゃなくてイイ!とまでなるのだからイケメンおそるべし。 「じゃあ木村の席だが…」 「はい、先生!私の隣に都合よく、なぜだか空いている席があります!」 都合よく、というか花子がこんな時のために用意していた席なのだが、誰もつっこんだりはしない。だって、花子だもん。 「そうか、それは都合がいいな。じゃあ木村の席は、山本の隣だな」 よっしゃと小さくガッツポーズをする花子の隣に、健が腰かけた。 「また会ったね。よろしくね、お隣さん」 顔を寄せてこそっと言ってくる健に花子は顔を赤くして、こくこくと頷くしかできなかった。 妄想では百戦錬磨の花子だが、実戦経験は皆無だ。生のイケメンを前にしてたじたじである。
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