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「いや、わざわざすいません。」
「別に良いが……アンタも大変だな。同僚を探して家まで来るなんて。」
面倒事は勘弁してもらいたいと顔に書いてある大家に曖昧な苦笑いを返す。
同僚がいなくなって5日がたった。今まで無遅刻無欠勤で勤務態度も真面目な奴だ。会社のみんなも何か事件ではないかと心配している。そのために派遣されたのが同期の俺だった。何より、最後に奴を見たのが俺だったというのもあるだろう。
会議の資料の入ったUSBメモリを家に取りに帰ったあいつは、それきり音信不通となった。昼休みの時間が終わっても戻って来ず、携帯に連絡を入れても反応がない。3日過ぎたあたりから流石におかしいのではないか、となり様子を見に来た次第だった。
ガチャリ、と鍵が開けられる。扉を開けても異臭などはしないことから最悪の事態ではなさそうだと安堵する。初めて来たあいつの部屋は几帳面なあいつらしく整理整頓されていた。
「あれ、これ……。」
ゴミ一つ落ちていないフローリングにUSBがぽつんと落ちていた。おそらく、これが会議の資料だったのだろう。それをポケットに突っ込んで何か手がかりになるものを探してみる。
妙な箱が目に付いた。
内側を青で塗られた箱に、白い砂が敷き詰められている。テレビか何かで見たことがある気がした。その横にはガラスのラックがあり、様々な模型が置かれている。ここだけ見ると子供の遊び場のようだった。
箱庭を覗くと、砂と石とたくさんの木の模型。
何を意味しているのか、素人の俺にはわからなかった。気まぐれに、白い砂に手を触れてみる。そして何か砂の中に埋まっていることに気が付いた。
「なんだこれ。何でこれだけ埋まってんだ……?」
白い砂の中には指でつまめるほどの、人間の模型が一つあった。
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