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甘い誘惑を断ち切って
「不倫などする女の気が知れない」
というのが、今年で28になる派遣社員・真莉子の口癖だった。
妻子のある男と付き合い、地獄に堕ちた女は何十、いや何百万もいると言うのに、そんなものに手を出す女の気が全くもって知れなかったのである。
「独身だって、良い男はいっぱいいるでしょう。それなのに何故、既婚者の男性を選ぶのかしら?」
不倫する女を軽蔑すると共に、そんな素朴な疑問を長年ずっと抱いていた。
どうせ良い男と関係を結ぶなら、後腐れのない独身の男で良いじゃないか。
なぜ、わざわざリスクの高い既婚男性を選ぶのか。分からぬ、分からぬ・・・
だけど、自身には分からない魅力があるのだろうと、同時にそんな事を想っていたのもまた事実だ。
「ま、とびっきり良い男ならドツボにハマるのも分からない気はしないけど」
淹れたての珈琲を口に運びながらぼんやり物想いに耽る。
「世を賑わせる男って、大体そこまで良い男でもないじゃない」
石田純一に、なんとかゲスの極み・・・不倫をした芸能人の名前は数多く耳にしているが、
そのどれもがパッとしない冴えない男ばかりで、真莉子の抱く疑問は募るばかりだ。
(ま、でも分からんこともないのよネ・・・)
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