1039人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
(何故だ、ソフィー……!)
怪我の有無を確認しているようだが、どうしてそこまでするのかが理解できない。
十年の月日を共にしているとはいえ、男の身体に気軽に触れるなど。
やはりソルフィオーラは彼を愛しているのだと思ってしまう。その証拠にソルフィオーラはブルームには目もくれないでエルを心配し続けている。
ブルームには分からない二人だけの物語がきっとあったのだ。二人の絆を感じる光景に何かが砕けるような感覚がする。ガラガラと音を立てて心の中で何かが崩れていく。
人はその感覚を“失恋”と呼ぶのだが、初恋を経験したばかりのブルームの脳内辞書にはまだその単語はなかった。
「……ブルームさま……」
剣を鞘に納めもせず茫然と立ち尽くしていると、ソルフィオーラがようやくこちらを向いた。
目の端に浮かんでいた涙粒がはらりと落ちる。
「どうして、突然こんなことをなさったのですか……?」
可憐な声は震えていた。
悲痛な声がブルームの胸を締め付ける。
「……ソフィー、私は」
「わたくしと……エルのこと、ご存知でいらしたのでしょう? それなのに、こんな……」
ソルフィオーラとエルのこと。
二人の関係について言っているのだろうが、ブルームにはピンとこない。
最初のコメントを投稿しよう!