第三章 燃える月と太陽の涙

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(何故だ、ソフィー……!)  怪我の有無を確認しているようだが、どうしてそこまでするのかが理解できない。  十年の月日を共にしているとはいえ、男の身体に気軽に触れるなど。  やはりソルフィオーラは彼を愛しているのだと思ってしまう。その証拠にソルフィオーラはブルームには目もくれないでエルを心配し続けている。  ブルームには分からない二人だけの物語がきっとあったのだ。二人の絆を感じる光景に何かが砕けるような感覚がする。ガラガラと音を立てて心の中で何かが崩れていく。  人はその感覚を“失恋”と呼ぶのだが、初恋を経験したばかりのブルームの脳内辞書にはまだその単語はなかった。 「……ブルームさま……」  剣を鞘に納めもせず茫然と立ち尽くしていると、ソルフィオーラがようやくこちらを向いた。  目の端に浮かんでいた涙粒がはらりと落ちる。 「どうして、突然こんなことをなさったのですか……?」  可憐な声は震えていた。  悲痛な声がブルームの胸を締め付ける。 「……ソフィー、私は」 「わたくしと……エルのこと、ご存知でいらしたのでしょう? それなのに、こんな……」  ソルフィオーラとエルのこと。  二人の関係について言っているのだろうが、ブルームにはピンとこない。
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