第三章 燃える月と太陽の涙

40/41
1039人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
 さすがに結婚相手に騎士と恋仲であったなど普通は言わないと思うが。  ここへ来て初めてブルームは自分の考えに違和感を抱いた。  よくよく考えてみればすぐに分かる事だった。  もし恋仲であったとしても無くても、娘の嫁ぎ先に護衛とはいえ異性を同行させるだろうか。  そういえばエルはソルフィオーラの身支度も手伝っている。  初夜のあの日、ソルフィオーラの部屋から出てくるエルとすれ違っているじゃないか。あの時は誓いのキスのことや初めてに挑む緊張もあって拗れた考え方しかできなかった。  ────そうだ。騎士が主の身支度に手を出すなどあり得ないのだ。 (もしや、私はとんでもない思い違いを……?)  頭のてっぺんからさっと血の気が引いていくようだった。  しかし、今気づいたところでもう遅い。過ぎた時間は戻らない。 「ブルームさま……ひどいです……」  ソルフィオーラの一言はナイフのようにぐさりと突き刺さった。  頭が真っ白になった。ギャラリーも領主夫妻の様子に戸惑っているようで、ざわざわと囁き合う声が聞こえてくる。どうした、何が起きた、奥様が泣いていらっしゃるぞと。  ブルームに背を向けて、立ち上がったエルと共にソルフィオーラが去って行く。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!