第三章 燃える月と太陽の涙

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「……旦那様、私も奥様に付き添いますのでここで失礼します」  近くで控えていたノクスも執事としての体面は保ちつつも、ブルームを冷やかに一瞥してソルフィオーラの後を追う。ブルームにしか聞こえない声量で『頭冷やせ』と言い置いて。  失態を犯したことは間違いなかった。  ソルフィオーラの表情、ノクスの態度が物語っている。  しかし、脳内は真っ白で何も考えられない。今すぐ何かフォローなりなんなりしなければならないのは分かっている。ミスは取り消せないが、処理を後回しにすればするほど面倒なことになるのは仕事も同じだから。  それでも何も考えつかない。何をどうすればいいのかも分からない。  ソルフィオーラの涙が、頭から離れない。  遠くで馬車に乗り込む妻の後ろ姿に背を向ける。 「……休憩は終わりだ。作業を再開する」  うまく冷静を装えているか自信がない。  仕事に逃げるしか出来ない自分が情けなくてたまらなかった。
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