第四章 月はすれ違いの太陽を腕に抱く

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「ねぇ、エル……」 「はい、奥様」  ぽつりと言葉を落とすように話しかけると、すぐに返事があった。  エルの視線を感じてもソルフィオーラは俯いたまま続きを口にする。 「三か月前のあの日……エルから見てわたくしはどんな様子だった?」 「あの日の──ソルフィオーラ様は、とても喜んでいらっしゃいました。見ている自分も温かい気持ちになるくらい、心の底から嬉しそうに笑って……」  太陽のような笑顔だったと、エルはそう言い結んだ。 「……そういえば、エルも一緒になって喜んでくれたのよね。両手を取り合ってぴょんぴょんと飛び跳ねて────」 「恥ずかしいので忘れてください……と言いたいところですが、恋患うソルフィオーラ様をお傍で見ていましたから。自分のことのように嬉しかったのです」 「ふふ。エルのそういうところ、本当に好きよ。実の姉のようで、貴女が傍にいてくれると安心するの」  言いながら昨日のショックが蘇ってきて、胸が軋む思いがした。  本当にエルが斬られてしまうかもしれないと気が気でなく、ブルームの乱暴な剣捌きに始終ハラハラしっぱなしだった。  ブルームとノクスの手合わせを先日見させてもらったことがあるが、その時は模擬剣での手合わせであったしブルームの剣捌きも丁寧でかつ綺麗なものだった。  だからこそ昨日のブルームは異常だと思ったのだ。いくらエルが強いとはいえあんな乱暴な剣を異性相手に振るうなんて信じられなかった。
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