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「────待って。手紙は、二枚……だったよ?」
復習のために思い出した記憶を言葉にしていたブルームだったが、我に返ったノクスから不意に遮られてしまった。
言葉を取り戻したノクスにブルームは眉を寄せる。────二枚?
「…………は?」
「…………二枚、重ねられていたでしょう……?」
「重ねられ……?」
「…………」
「…………」
今度は二人して言葉を失った。
確かに、思い返してみると、一枚にしては厚めの紙だとは思っていた。
だが、フランベルグ家は商家であるし、自分の知らない上質な紙をお持ちなのだろうと特に疑問に思わなかったのだ。
手紙を読んだノクスとの会話も特にすれ違っていなかった────。
『これは……本当に心温まる手紙だね。当主サニーズ様のお人柄の良さをとても感じる』
『ああ……そうだな』
『そんなサニーズ様のご家族なのだから、さぞ素晴らしい人なのでしょう。僕も早く会ってみたいよ』
いや、すれ違っていた。すれ違っていたのだ。
ノクスが言う家族とは、当然ソルフィオーラの事だとブルームは思っていた。一枚目の手紙には太陽だと表される美しい愛娘の素晴らしさを大いに語っていたから。
だが、ブルームが読んでいない二枚目にエルの事情が書かれていたのだとしたら、あの時ノクスが言っていた家族はエルを指していたのかもしれない。
手紙を読んだノクスが家族と形容したということは、サニーズにとってエルは娘同等の存在であるということになる。
「教えてくれないか、ノクス……。あの手紙の続きには、……何て、書いてあったのだ……?」
そしてブルームはようやく知った。
エルの事情を。ソルフィオーラと彼女の絆を。
────手紙をちゃんと読んでいなかったがために自分がしていた誤解を。
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