第四章 月はすれ違いの太陽を腕に抱く

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「なんてことだ……」  血の気が引いていく。  とんでもないミスに今頃気付いたブルームは、ふらつきながら執務椅子に座り込んだ。  自分は最初から、ソルフィオーラを迎える前から失態を犯していたのだ。  全ては自分のせい。  初恋に浮かれた、果てしなく愚かな男の────。 「……実家に帰って、当然だ」  あの時ちゃんと確認していれば、なんて思ってももう遅い。過去には戻れないのだ。 「……もう、どうしようもないな」  いつものブルームであれば何が何でも挽回しようとしただろう。信頼を得るためにあれこれと思索し、奔走した。  だが今のブルームには何も考えられなかった。  頭は真っ白だが取り返しのつかない事実に絶望感だけをはっきりと感じる。  椅子に座って頭を抱え項垂れる────今のブルームはただの情けない男でしかなかった。 「本当に、無知で、愚かな、……自業自得だ。お前の言う通り、もっと経験しておけばよかったかもしれないな……」  すると、当然そんな男に怒りを覚える者がいるだろう。  頭を抱えながら自嘲気味に呟くブルームは目前に迫ったそれに気付かない。 「なぁ、ノクス……」  顔を上げた瞬間、鈍い衝撃が落ちて来た。頭のてっぺんにゴツンと。  まるで石でも落ちて来たかのようだった。間違いなく目から星が飛んだと思う。  じんじんと痛み出した頭部を押さえ改めて顔を上げると、今まで見たことのない表情をした幼馴染が目の前に立っていた。
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