第四章 月はすれ違いの太陽を腕に抱く

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 何せ休暇中の分もまだあるのだ。とは言いつつも、本当に急を要しそうな案件があれば連絡するよう言っておいたのだがそれは無かったので、おそらく急を要するものはほとんどないだろうとブルームは予想していた。  ……が、早々に気になるものが出てきた。 「これは……」  グレンツェン領の隣──ルブルム領からの封書だった。ルブルムを統治する家の紋が押されている。山の上部にあったので、おそらくまだ届いたばかりだろう。ブルームは早速開封し中を確認する。  その内容は最近出没し始めた山賊団について書かれていた。  ルブルム領内で近頃被害が続き、調査の結果山賊団が拠点にしていると思われる場所を突き止めたこと。  討伐隊を結成したが、その拠点と思われる場所がグレンツェン領の境目付近であるため、領境での戦闘を許可してほしいこと。  また、ルブルムからグレンツェンを繋ぐ街道は賊に襲われる危険性があるため充分注意して欲しいということ────そこまで読んで、ブルームは青褪めた。 「ノクス……ソフィーは……ルブルム領経由で、王都へ?」  震える声でノクスに尋ねた。  否定されることを期待しながら。
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