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もしかして、夫人が怖がってしまったのか。
もしかして、当主様のが立派すぎて入らなかったとか。
もしかして、当主様が絶倫すぎて、性癖がヤバ過ぎて引かれてしまったとか。
当主様の当主様が――と使用人たちの間で下世話な勘繰りがされていたが、もちろん自分たちの主に対しそんなことを聞けるはずが無い。
だがたった一人だけ、ずけずけとブルームに言い詰めることが出来る人物がいた。
それが幼馴染であり、セレネイド家の執事を務めるノクスである。
「……というわけで、ブルーム絶倫説や変態説が提唱される前にいい加減何があったのか教えてくれませんか?」
顔の両横に手を置かれ、笑顔のノクスが言う。
朝食を終え早々に自室へと戻ったブルームは、今日こそは逃がさないとばかりに壁へ追い詰められていた。しかも背丈がそんなに変わらないので、爽やかな笑顔がとても近い。
……これがソルフィオーラであれば死ぬほど嬉しいのに。何が悲しくて男に迫られねばならんのだと、ブルームは短く息を吐いた。ていうか絶倫説って何だ、変態説って何のことだと額を抱える。
ノクスに尋ねられたのはこれで三度目だった。
一度目は虚しい夜明けを迎えた朝、二度目は昨日、そして三度目が今日。
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