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序章 月は太陽に出会う
それはある冬の日のこと。
王都の貴族が主催した舞踏会から帰ってきた我が主――――ブルーム・セレネイド公爵の顔を見て、執事ノクス・ガードナーは眉を顰めた。
なんというか……悪魔に魂でも抜かれたかのようにぼけーっとしているのだ。
せっかく眉目秀麗な容姿をしているのに、普段から眉間に皺を寄せ難しい顔をしている堅物眼鏡なブルームだ。
それがぼけっとしているなんて、普段の彼からは到底想像できない表情だった。
(無理矢理舞踏会へ行かせたのが不味かったかな……?)
ブルームは社交嫌いだ。今年で二八歳になるというのに、そのおかげで浮いた話が一つも無い。それで名のある貴族として未来の為に跡取りを考えて貰いたく、執事としてではなく幼馴染として意見しただけなのだが。
玄関から一歩も動こうとせずほげーっとしている主人へ歩み寄り、ノクスは声を掛けた。
「お帰りなさいませ。顔色が優れないようですが……舞踏会で何か?」
「ああ……」
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