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「私……。」
フワリ唇に暖かいモノが重ねられた。
そう、愛しい彼の唇だ。
「美しい姫、お許しください。
ついこんな愚考を。」
「いえ、良いんです。
それよりもう一度……。」
私が目をつむる。
だんだん彼の顔が近づいてくる気配がする。
【愛しい彼の全てを捧げよう。】
あの声だ。
「かはっ。」
愛しい彼の口から血が流れる。
え?
見れば胸に矢が刺さっていた。
彼は力つきる前に私をゆっくり降ろすと、にっこり微笑んだ。
そしてそのまま力なく私の胸に顔を埋めたのだ。
「そ……そんな……。」
【約束は成就した。
愛しい彼の全ては今お前のモノだ。】
「こんなの望んでない!
彼が死ぬなんて!」
私は力一杯叫んだ。
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