0人が本棚に入れています
本棚に追加
ゲリラ豪雨って、冷たいとか濡れちゃうとか通り越して痛い。物理で痛い。慌てて橋の下まで走った時には疲労感はピークに達してた。ようやく雨の当たらない場所にたどり着いた一瞬、何かに正面からぶつかった。思わずよろけて、けれど目の前にも、見下ろした足元には何もなかった。つまり何もないところでこけた。
こういう瞬間、つくづくと自分の疲れを自覚する。
川面に当たるぶん、いつも以上に凄まじい雨音を聴きながら、俺はぺたりと地面にしゃがみこんだ。立ちたくないなぁ。早く通り過ぎないかな。あぁ、早く帰って発泡酒飲みたい。
「ん?」
何気なく見下ろした護岸ブロックの上に、不穏なものを見つけた。……なんだあれ。
河川敷といっても、全面舗装整備されていて、川面までブロックが敷き詰められている。遊歩道は、ランニングやウォーキング、犬の散歩なんかで暗くなってもそこそこ人通りもある。サイクリングロードも並行してるから、自転車を走らせる人も多い。でも。
こんな場所で、水泳する人がいるなんて話、聞いたことはない。そもそも遊泳禁止なんじゃ。
心臓がばくばくした。暗いし雨に靄ってよく見えないけど、片足を川の中に投げ出し、その人はうつ伏せに倒れていた。短パンにサンダルをひっかけ、パーカーをかぶっている。大の字で、豪快な倒れ姿だ。上京して7年、昼寝しているホームレスは駅や公園でよく目にするけど、さすがにそう言う感じじゃない。いや、そんな暢気に観察している場合じゃなくて。
「ちょ、大丈夫ですか!」
最初のコメントを投稿しよう!