第1章 俺、王子だけど全く期待されてないんだが。

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 ここは、人間界と地獄界の中間にある、魔界。正式名称は魔法界だが、今は魔族が住むから魔族界だと思われている。我らがグランドセントラル王国は、古くは復活した悪魔が人間界に侵入したのを阻止し、神々からその報酬として、金銀財宝ではなく、新たなる特殊能力を得た。そして、得た力を持って更に悪魔達を撃退し、最高の神の騎士と讃えられ、繁栄を極め魔法界全土に命令を出し、指揮を取るまでになっていた。  だが、そんなご先祖様の栄光は忘れ去られ、古代語は読める者でさえ、極めて少数。せっかく古代語を習得して、過去の歴史を知る事が出来たが、誰も信じない上に、創作だ。妄想だと罵倒されまでした。しかも、解読が終った時には37歳になっていた。人間界だと、もうおっさん。半生を無駄に過ごしたような存在になっていた。 「このままではいけない何かを始めないと」  大魔王エルドラドの息子、ルドは悩んでいた。古代語を復活させ、その解読書を売り出し、講師や古代の本の翻訳で飯を食おうと将来設計していた。ごが、その計画は儚く散って、灰になった。何故なら、自分の祖国のいや、未来の家来である学者達がルドの説を全く信じる事なく、30年の歳月を経て得た研究結果も、魔法でボンと炎を出して燃やしたのだった。  他国にある魔法学校なら、ルドの研究に理解を示してくれる可能性がある上に、古代語を翻訳した者がいれば、答え合わせが出来る。さらに、人型なのに、獣型のように魔法が使えないというコンプレックスも克服出来るのではないか。他国には夢や希望が詰まっている。そして、自分の祖国に絶望したルドは魔法学校に入学したいと相談に向かった。 「父上にご相談がありまして。私は幼子でも魔法を使えるのに、未だ一切使えません。そこで、魔界有数の魔法学校エリクシルに入学したいのですが」  ルドは勇気を持って父親の大魔王に頼んでみた。すると、「学費は自分で稼げ」と、言われたので、こう答えた。 「ならば、私は今から古代語学者から盗賊に職を変えましょう。そして、資金が集まり次第、即座に魔法学校に向かいます」  ルドは大魔王にそう宣言し、その足で宝物庫に向かい、数々の宝石類をカバンに詰め込んで、魔法学校に旅立った。大魔王は盗まれても何も言わず、それどころか宝剣も持って行けばいいのにと、言っていたが、義理の母は殺すと激怒していた。
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