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「……であるため、我ら魔法師は-----」
四限目の魔法歴学の授業。
授業を進める教師は背中の丸いおじいちゃん先生である。
のんびりとした口調に穏やかな声のトーンで眠気を誘う内容でありながら殆どの生徒はしっかりと背筋を伸ばし教師に注目していた。
ある生徒を除いて。
「……おや、哀川くん」
大勢が顔を上げている中、窓際の一番後ろにある陥没に気づいたのか先生が少年の名前を呼んだ。
「…………」
名前を呼ばれただけじゃ目を覚まさない。
隣の生徒が彼の肩を叩くが起きる気配は全くない。
その様子に教師はずれた丸い老眼鏡をかけ直して呟いた。
「"落雷"」
それは小さな雷だった。
少年の頭上で一瞬光り、その後周りの人にしか聞こえない音量でバチッと音を発した。
周りの生徒は固唾を飲んで体を縮こませる。
年取った教師だけが未だ穏やかに自分の起こした魔法を見守っていた。
「……ん…………」
間も無くして少年がピクリと動いた。
生徒は一斉に張り詰めていた息を吐き出して安堵する。
「……哀川くん、目が覚めたかな」
「ん……あ、はい」
体を起こした少年はこの現状に気づいていないのか大きく伸びをした。
それから教師に声をかけられ、返事をする。
なんとも緊張感のない。
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