Somewhere only we know

２

　＊

　「誰も来ないのではないだろうか……」と。
　俺の胸の内にくぐもっていた、そんな若干の心配をよそに、親父の葬儀には、それなりの人が集まった。
　同年代の中では、比較的早めに天へと召されたクチだ。まだまだ、街にも幾多の知り合いが健在だった。

　ありきたりの文言で示される弔意が、ひどく心にしみて感じられるのは、久方ぶりの郷里だからなのだろうか。
　土に還っていく行く父親を見送るさなか、俺のまなじりにも涙が滲みそうになった。

　でも。
　もう、これで、俺がこの街に帰ってくることもないだろうな……と。
　胸の内には、ぼんやりとそんな思いが浮かび上がってもいたのだ。

　「もう一晩くらい、泊まっていけよ」というジャックの誘いを断って、俺は葬儀の終わった夕方にヤツの家を去った。
　これ以上、ともに飲んだところで、昨晩しつくしてしまった思い出話を、もう一度繰り返すだけで。
　かといって、互いの近況を語り合う気もない。
　そんな擦り切れた日常など、俺たちのどちらも、多分、口にしたくないに違いなかった。

　街を出てからのことを、ジャックに話すつもりはなかった。　

　自分が同性愛者であると、ヤツに知らせる気はない。