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知られないままでいたかった。このままずっと。
変な風に誤解をされたくなかった。
このちっぽけな田舎町で一緒に育った俺たちは「友達」だった。
そのことに「嘘」はまるでなくて。
プレイパークのシャンデリアみたいに、キラキラ虹色に光っていた短い子供時代を、あの頃の思い出を。
塗り替えて欲しくなかった。塗り替えたくはなかった。
だから――
車に乗り込んで。
ヒースの茂みが続く中、なだらかにうねる道を走り出す。
もう、徐々に日が傾き始めていた。
闇が溶け出しはじめる空気に、俺は車を止めた。
ドアを開け、草地へと降りる。
カサカサと乾いた葉擦れの音。靴底にめり込むような泥の感触。
吹き付ける風が、冷たさを増してきた。
俺は、ボアフリースのジャケットのジッパーを首元まで引き上げ、ポケットから紙袋に入った酒の小瓶を取り出した。
草地のただ中で、俺は足を止めて丘をふり仰ぐ。
夕日が、丘の上の城跡の向こうへと沈んでいく。
あの頃。
悪ガキどもで、ひと壜のジンを回し飲みしていた頃。
みんなで沈んでいく太陽を見やりながら。
あの時、俺は……俺たちは、なにかが見つかった気がしていた。
なにか、「答え」のようなものが。
結局、それは幻で。
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