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一体、何年ぶりの帰郷だろう――
正確なことは、すぐには思い浮かばなかった。
ハンドルを握る俺の手は、泥炭地の中、緩やかなカーブを描く道に沿って流れるように揺れていた。
車は加速を続けていて、メーターは、とうに八十マイルに届いている。
向かっているのは、なんの変哲もない田舎町。
ヒースとハリエニシダに覆われたかさつく草地に取り囲まれた街には、目抜き通りはたったひとつ。
たぶん戦間期からこっち、きっと、その石畳の数さえ変わっていないだろう、そんな村で。
戦後、そこを取り巻くムーアの中に飛び飛びに建てられた集合住宅と小さなテラスハウスへと移ってきた住人らは、村の目抜き通りではなく、国道沿いの四角くて、だだっ広いばかりの量販店へと出かけていく。
今、そんなスーパーマーケットやホームセンターの駐車場に停まっているのは、ガタガタの中古車ばかりだった。
まだセカンダリーのガキだった俺が、週末、品出しのアルバイトで小銭を稼いでいた頃はそれでも、もう少しマシな車も停まっていたように思うが。
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