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家業の雑貨屋を継いだエドは、ある冬。
泥酔してトラックに跳ね飛ばされ、三十前で死んだ。クリスマスの二日前だった。
どっちも、バイト代で安酒を仕入れては、ヒースの野原で夜通し、吐くまで飲んだ悪友どもだった。
住んでいたテラスハウスは、父親をホームに入れるときに売り払っていて、俺が戻る場所は、この街にはもうない。
そのことも、この街から俺の足がすっかりと遠のいていた理由のひとつだったのかもしれない。
「親父が死んで、そっちに帰るから」と。
そう俺が連絡を入れると、ジャックは「じゃあ、オレんとこに泊まれよ、ランス。下のガキも、あちこち遊び歩いて帰って来やしないしな」と、ごく気安く言ってくれた。
「そういや……下の子、幾つになったっけ?」と、俺はジャックに訊く。
もう十五だぜと、そう応じるジャックの言葉に、思わず、自分の耳を疑いたくなった。
「おいおい、そんな歳かよ、もう……」
溜息交じりに言ってから、俺は、
「そうだな……そういえば俺たちだって、その頃には飲むわ吸うわと、色々やりまくってたよな」と続けて、ジャックとの通話を切った。
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