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予想通りの展開ではあったが、家電量販店のシフトを終えたジャックは、大量のビールと安ワインを買い込んで家に戻ってきたから、俺たちはそれを手にし、延々と思い出話に花を咲かせることになった。
ちょうど金曜の夜で、ジャックの子供は、どこかに出かけてしまっていた。
「多分、湖の端の遊園地さ」
行先は知れているといった風にジャックは言った。
「このあたりで、金曜に夜通し明かりがついていて、露店でスナックとビールが買えるような場所は、あのプレイパークしかないからな」
あの遊園地、まだあったのかよ……と、呆れ口調で吐き捨ててから、俺はぬるいビールを喉に流し込む。
すると、クシャリと笑ってジャックが、「女の子を誘って、オレらもよく行ったよな、ランス」と応じた。
たしか、俺が初めて女の子にキスをしたのも、あの遊園地だった。
それは多分に酔った勢いってヤツで。
首尾としては、大して上手くいかなったから、彼女とは、別にそれ以上の付き合いにはならなかった。
俺は別に、その「失敗」をそれほど気には留めていなかった。
ジャックや、仲間たちとつるんでいる方が、むしろ楽しかった。
めったに思い出すこともなくなっていたそんな日々の記憶が、押し寄せるようにして蘇ってくる。
夜のメリーゴーランドみたいに、安っぽくともキラキラと虹色に輝いていた、そんな頃のことが。
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