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「私だけが変なのかな?
それとも世界が私を拒否しているのかな?
いくら考えても答えは出てこなかった。
あの日、あの時、あの瞬間から、なんで彼女の笑顔が頭から消えないのか。
最初は「ああ、やっぱり私の大切な友達なんだな。」程度に思っていた。
でも違った。それでは納得していない自分がいたから。
もちろん必死に抗った。そんなことありえないってなんども自分に言い聞かせた。
でもこの思いを消すことはできなかった。
だから認めざるおえなかったの。
私、吉田歩美が親友、須藤和奈に恋してるんだって。
もちろんこんな事実、おぞましいと自分でも思う。
そして叶わないことも知っている。
でも、それでも私は自分の気持ちを伝えたかった。
エゴイストだって言われても自己中心的と言われても構わない。
だってそうだもん、自分のことしか考えられないずるい人間だもん。
ただ早くこの苦しみから解放されたいだけ。
それだけのこと。
だから和奈にこの思いを打ち明けたら、ちゃんと自分で自分を解放する。
誰にも迷惑をかけない、優しい世界。
あれ、でもちょっとパパとママに迷惑かけちゃうかな。後お兄ちゃんにも。
ごめんね、みんな。私、自分勝手なんだ。
ちゃんと感謝してるから、ここまで育ててきてくれたこと。
だから、本当に・・・。本当にごめんね・・・。こんな風に育っちゃって。
パパもママもお兄ちゃんも悪くないんだよ。悪いのは私。こんな風に育っちゃった私なの。
だから私がいなくなっても気に病む必要なんかないからね。
これは私自身のけじめなの。
さようならなんて言わない。また生まれ変わったらみんなに会えるから。だから・・・。
元気でね。後、今までありがとう。
大好きです。
吉田歩美」
最後になるであろう手紙を書き終えて、一息つく。
これでいい。意外と自分の気持ちを言葉にするとスッキリする。
あとは本人に気持ちを伝えて、それでおしまい。
手紙を封筒に入れ、机の上に置いておく。
さて、出かけよう。
部屋のドアをあけ、階段を降りる。いつもの景色、いつもの感じ、そして最後の体験。玄関で靴を履いていて、誰もいない空間に挨拶する。
「いってきます。」
さようなら、みんな。
ドアを開ける行為は、まるで閉鎖された世界から飛び出すみたいだった。
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